堀越隆一公式サイト 作曲家、堀越隆一の公式サイト。1976年のデビュー以降、数々の作品を発表する傍ら、編曲、指揮、評論を始め、後進育成の為のアルエム弦楽合奏団の設立、音楽を愛する人に最良の空間を提供するすみだチェリーホールの運営など多岐に渡る活動を展開。最新の活動情報、チケットや楽譜の販売など、随時更新していますので、ぜひお立寄り下さい。

「フィレンツェの思い出」って?

「フィレンツェの思い出」って?

 

今回のブログもチャイコフスキーにまつわる話題。

この2年程、チャイコフスキー の「フィレンツェの思い出」のスコアとずっと付き合っている。

本当は今年の7月21日のアルエム弦楽合奏団第10回定期演奏会(白寿ホール)で演奏するために見始めたのだが、残念ながらこのコンサートはコロナの影響で2021年の5月に延期になってしまった。

そのおかげというか、何というか、とっくに終わって次の曲に動いているはずが今現在もこの曲と付き合っている。

 

作者自身がつけたこの作品のフランス語のタイトルSouvenir de Florence。

Souvenir 自体は記念品、思い出という意味なので邦訳は「フィレンツェの思い出」となったのだろうが、ただ僕にはどうもこのタイトルと曲の内容が当初から一致せず、ある意味それが悩みのタネだった。地名をタイトルにしたものにはイタリア奇想曲があるが、こちらはまさにタイトル通りロシア人が感じるイタリアのイメージの明るく華麗な楽曲に仕上がっている。

 

 

この作家は純文学路線と大衆文学路線を書き分けている

 

あくまでも僕の考えなのだが、チャイコフスキーは職業作曲家としてある意味プロ中のプロだったと思う。書式の面での難解さを極力廃して、いかに自分の楽想を明瞭に伝えるかということに作曲の眼目をおいていた。なんと言ったら良いのだろうか語り口の複雑さを効果としては用いないこと、クライアントの要望に答え自分の作品を聞かせること、そして何よりも自分の楽想をどう書いたら聞き手に伝わるかということに彼は工夫を凝らしていた。

 

その結果として彼の曲は、文章で言えば同じ文体(語り口)で書かれている。展開に複雑さを持ち込まない。音楽の内容にかかわらずその書式がわかりやすいくなるように工夫を重ねている。受け手にどう捉えられるかを考え、語り口を平易にすることに徹底している、敷居を決して高くしない。

 

またこの作家は純文学路線と大衆文学路線を書き分けているように僕は思う。ごく大雑把に分けるとバレエ、オペラなどのクライアントの要望に合わせた大衆路線の作品と交響曲、室内楽と表題のない器楽曲の純文学路線。

 

そしてこの「フィレンツェの思い出」はチャイコフスキーの作品の中では最もシリアスな内容を含んだ楽曲だと思う。あくまでも僕の知っている範囲でなのだが交響曲第6番「悲愴」と双璧かあるいはそれ以上に重い内容を含んだ作品だ。

そのためいざ演奏するとなると、なかなかに高いハードルを越えなければならないことを実感している。

 

何が違うかと言えば動機/モチーフではないかと

 

作品によって路線が違うと書いたが、この作家の場合語り口はどれもほぼ同じなので、何が違うのかというのが判りづらいという難点がある。多分お聞きになっているみなさんも、どれも同じじゃないかと言われる方もいらっしゃると思う。それは僕にもよくわかる。

 

音楽の場合は文学と違い純文学、大衆文学と言っても判別が難しい。クラシックとポピュラーというのともまた違う。

だいたいは形式(フォルム)と語り口(エクリチュール)で同じ作家の曲でもそのジャンルは聞けばわかるものだがチャイコフスキーの場合にはわかりにくいかもしれない。

 

でもイタリア奇想曲と交響曲第6番「悲愴」ならば区別が付きやすいかな?

 

楽譜の上での動機、主題に限定して言えば、西欧の音楽作品は動機を展開していくことで作品を形成している。極論すれば動機は作品を作り上げる上での素材であり、できるだけシンプルで変化しやすい(扱いやすい)ものが選択される。ベートーヴェンが確信犯的な始まりであり典型だが、動機、主題の変化、組み立て方で楽曲を形成していく。

 

チャイコフスキーは他のロシアの作曲家に比べ西欧音楽に影響を受けそれを範としていながら。僕には音楽的な主題、動機に関しての意識はやや異なるものを持っているように思う。そこが彼の作曲のモチーフの要になっているんじゃないかと、

 

ここで言うモチーフ/動機は犯罪ドラマなどで言う「この犯人の動機はなんだ」の動機で、音楽用語上での動機、主題ではない。(それも含まれるが)文芸批評と同じでその音/音形をなぜ作者は選択したのかと言うところまでを掘り下げた部分。

 

極めて大雑把に言うと、この曲のスコアから見えるチャイコフスキーはかなりメランコリックであり、錯綜している。

「スペードの女王」の作曲のためこの地(フィレンツェ)を訪れメック夫人にも結局は会えなかった(会わなかった)もしかしたらその焦燥感、叶えられない思い等、複雑に揺れ動く感情が入ってしまったのだろうか。

これは彼の他の作品には見られない特徴のように思える。

 

以後、個々の楽章について僕なりの分析を書いてみようと思っています。

 

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