堀越隆一公式サイト 作曲家、堀越隆一の公式サイト。1976年のデビュー以降、数々の作品を発表する傍ら、編曲、指揮、評論を始め、後進育成の為のアルエム弦楽合奏団の設立、音楽を愛する人に最良の空間を提供するすみだチェリーホールの運営など多岐に渡る活動を展開。最新の活動情報、チケットや楽譜の販売など、随時更新していますので、ぜひお立寄り下さい。

子どもの領分編曲ノート

「子供の領分」弦楽合奏版/四重奏版 編曲ノート

ドビュッシーのピアノ組曲「子どもの領分」をカルテットと弦楽合奏にアレンジした。以前にSNSでも書いたのだけれど、この組曲全体の編曲は楽譜を見た時点では全く考えていなかった。

だがやりはじめてみると持続が可能で、音が伸びている間に表情がつけられる弦楽器での響きのグラデーションと線の動きが作品に予想外に良い効果を生ませることがわかり、結果的に弦楽合奏版と、弦楽四重奏版が出来上がった。

弦楽合奏版全6曲は、2018年8月19日白寿ホールで開催するアルエム弦楽合奏団第9回定期演奏会でアルエムの子供達のナレーション付きで演奏されました。

個々の曲についての編曲ノートをこれからアップして行こうと思います。

 

1. 「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」

原調のハ長調のままで行くかどうかということが初めの課題だった。曲を構成する十六分音符の音型をヴァイオリンで担当させるのは低すぎるため、全体を長2度あげニ長調にした。原調のままで冒頭の声部をヴィオラに任せるという選択もできるのだが、その場合主要な声部の動きをヴァイオリンでリードしていこうとすると制約が多くなると判断をした。

 

調と音域の問題は編曲された楽器/編成等に合わせて柔軟に対応する方が良いというのが僕の考えだ。例えばコーダの部分などもしこの音域を厳格に守ろうとすればヴァイオリンとヴィオラは出番が殆どなくなってしまうことになる。

 

 

 

2. 「象の子守歌」

この曲は初めカルテットでの演奏予定があったので弦楽四重奏版が先になった。主旋律はチェロの音域ではカバーできないのでオクターブあげて調整した。合奏版ではコントラバスのソロで実音通りの形で演奏できる。特に中間部のところを含め全体に、持続音に表情がつけられる弦の響きとピチカートが効果的で、このアレンジの方が原曲より響きの変化の面白さが出ているように思っている。

 

 

 

3. 「人形へのセレナード」

編曲を検討する段階で1曲め「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」とこの曲だけは編曲は無理かなと思っていた。音域が高音域から中音域までの中で主要な声部が動いているためこれに低声部を絡ませるのはなかなか困難に思えた。ことにコーダの部分(譜例)をどうするかは最後まで悩んだ。

 

 

 

 

 

4. 「雪は踊っている」

この冒頭部分もどう始めようか色々考えたが、最終的にカプレの管弦楽編曲のスコアを見てこれを参考にさせていただいた。

オケ版に比べてもむしろはっきりとした色彩のない弦のみのモノクロームな響きが雪の雰囲気をうまく表せたと思っている。

 

 

 

 

 

 

5. 「小さな羊飼い」

スタッフが記譜のミスを見つけてくれました!

練習してても全然気付かなかったなあ、原曲弾いたこともあるのに!なお白寿ホールの演奏では各曲の前にアルエムの子供達のナレーションがつきます

羊飼いの笛はどう考えても木管でしょう、カプレ版でもオーボエのソロです。このアレンジでは弦楽器だけという制約の中でイメージを拡大し、何人かの羊飼いが互いに笛で呼びかわしている情景にしました。途中で何箇所か挟まれる終止形のフェルマータを綺麗に響かせるせるため、四重奏版では全体をハ長調に移調しています。

 

 

 

 

 

6. 「ゴリウォーグのケークウォーク」

きっかけは2018年にミューザ川崎でで開催された、日本弦楽指導者協会関東支部主催第77回全国大会での演奏会曲目の選曲会議で「子どもの領分」のゴリウォーグのケークウォークなんか寸法的にも丁度いいし、面白いんじゃない」と言ったのが始まりだった。

やってみて最初の課題は調の問題だった。原調変ホ長調のままだと中間部が変ト長調になり、奏者に負担がかかる割には弦楽として良く鳴る響きにはならない。ヴァイオリンのピース(多分ハイフェッツ版)では原調でやっているがここは半音下の二長調に移調して編曲することにした。原曲のややセピアがかった雰囲気は薄れてしまうが、その分明るさと何より楽器が鳴ることでの躍動感が得られたと思う。

 

原調の変ホ長調を二長調に移調して編曲したことで、結果的に1曲めの「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」と同じ調になり組曲全体としては統一感が取れたものになった。

但しこれはあくまで結果的にということで、この調的な統一感をドビュッシーご本人が望んでいたとは思えない。

 

 

終わりに

組曲全体の編曲は楽譜を見た時点では全く考えていなかった(無理だと思っていた)がやりはじめてみると持続が可能で、音が伸びている間に表情がつけられる弦楽器での響きのグラデーションと線の動きが作品に予想外に良い効果を生ませることがわかり、弦楽合奏版と、カルテット版を書くことにした。合奏版では大半の弦楽合奏では低声部の補助として扱われているコントラバスに独立性を持たせ、響きの豊かさを追求して見た。またカルテット版では少ない楽器と限られた音域の中で曲の線的な動きを明確にすることで室内楽的な面白さを追求するという形でそれぞれ並行して作業を進めた。

 

ドビュッシー:組曲「子供の領分」/弦楽合奏版 演奏:アルエム弦楽合奏団 編曲・指揮:堀越 隆一 2018.8.19白寿ホールライブ

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