マーラー:第6交響曲 クロノスカルテット
マーラー:第6交響曲-マーラー・シリーズ(若杉・都響)於サントリー・ホール-
1989年1月26日
良い演奏だった。でもマーラーの第6交響曲のようなエモーションの固まりのような曲は単なる「良い演奏」だけでは本当の満足は与えられない。マーラーの音楽はオーケストラに全力で立ち向かわせる事を要求する。コンサートで聴くという体験は実際に生のバランスを聴くという確定的な要素を得るということではなく、オーケストレイションのある実現できる範囲を見極めること、そしてステージ上での効果のある組み合わせのパターンを知ることの二つ、さらにつけ加えれば全体の持続する流れを体験できる、以上の3点に集約される。ブームとしてではなくマーラーの音楽の何が人々を引きつけるのか?現在という時が人々にに与える切迫感とマーラーの音楽に存在する強迫観念が共鳴しているのかどうか、他の作家に比べ特にマーラーの音楽に現在という時と共鳴する者が存在することは確実だろう。
クロノスカルテット
良いカルテットだ。殆んどノン・ヴィブラートで演奏する驚異的なアンサンブル!そして、現代の様々な様式の曲に対して全く柔軟に対応する。むしろこのカルテットでベートーヴェンの曲を聞いてみたいと言う強い欲求を感じた。