堀越隆一公式サイト 作曲家、堀越隆一の公式サイト。1976年のデビュー以降、数々の作品を発表する傍ら、編曲、指揮、評論を始め、後進育成の為のアルエム弦楽合奏団の設立、音楽を愛する人に最良の空間を提供するすみだチェリーホールの運営など多岐に渡る活動を展開。最新の活動情報、チケットや楽譜の販売など、随時更新していますので、ぜひお立寄り下さい。

コストロマ市での国際現代音楽祭 新聞評付き

コストロマ市での国際現代音楽祭

 

1994.7.22

 

今年の5月30日から6月4日までの六日間、モスクワ近郊のコストロマ市で国際現代音楽祭が開 催された。コストロマは、モスクワの北東に位置するいわゆる「黄金の環」と呼ばれている地 域の都市で、その中でも特に歴史の古い町の一つである。 参加したのは日本、オランダ、アメ リカ、ロシアの四カ国の音楽家と、さらにニージニ・ノヴゴロド市(旧ゴーリキー市)から演劇 アンサンブルが加わり、室内楽からパフォーマンスまで、幅広いプログラムが連日催された。

 

当初、この音楽祭は、「黄金の環」と呼ばれているこの地域の中の都市を、巡回しながら開催 される、二十日間ほどの音楽祭だったのだが。今年の4月の初めに、急に先方の経済的な事情で 延期になった、という連絡を受けた。その後、問い合わせ等やりとりはあったのだが、その月末に、コストロマ在住の作曲家のエレーナ・レーベジェワとモスクワの作曲家のセルゲイ・ジ ューコフが中心となって、コストロマ市単独での音楽祭の開催をしたいという、意思表示を受 けた。ご承知のように、厳しい国情の中で、多分ほとんど経済的な援助も当てにできずに、ほ ぼ手作りで、何とか音楽祭を開催しようという彼等の情熱には、まことに深い敬意を感じたの だが、しかし、すでに日本側の何人かの演奏家は降りてしまい、私の作品を演奏するウクライ ナのアンサンブルも、今回参加しないことがわかっていたので、正直にいって私(達)も決定をす るまで悩んだことは事実である。

 

結局、日本からの参加者は、私と共にこの音楽祭に最初から関わっていた作曲家の浅香満氏(か れの粘り強い実行力がなかったならば、おそらく我々の参加は実現していなかっただろう)。そ して二人の新進の演奏家、ギタリストの三浦浩氏とピアニストの黒川智佐さん。当初、私は一 人で参加する予定だったが、プログラムも変更せざるをえず、急遽、家内の堀越みちこ(Va)と、 長女のまき(Pf)も同行することになってしまった。

 

少なからぬ不安をもっての音楽祭への参加であったが、周囲を森に囲まれた、落ち着いた歴史 を感じさせる町の佇まいと、出会った人々との暖かい交流は、我々に多くのおもいでを残すこ とになった。また、日本の演奏会は大変好評で、この音楽祭の取材にきたニージニ・ノヴゴロ ド市のTV局から、出演者全員がインタヴューを受けた。我々の演奏会の内容については、コス トロマの新聞評をお読み頂ければとおもう。鈴木功さんに翻訳して頂いたものを氏のご好意に より掲載させていただいた。 昨年のタタールスタン、今年のコストロマと、私自身は、思いもかけず旧ソ連邦の地域へ二回 も訪れてしまったが、そこで感じるのは、『アジア』と『西欧』という二つの文化圏は、ユー ラシア大陸を挟んで徐々にそのグラデーションを変えながら連続しているということだ。そし てロシアは正にその中間に位置している。私自身はロシアで『東』と『西』の差異よりも、そ の混在と連続性ということを強く感じた次第である。

 

(日本・ロシア音楽家協会会報No.13 1994年8月)

 

日いづる国の音楽(コストロマ市新聞評)

 

6月1日、国際現代音楽祭の催しとして、《日いづる国》の作曲家や演奏家が参加して《日本音楽の夕べ》が行なわれた。フィルハーモニー大ホールの舞台に一番手で登場したのは、ギタリストの三浦浩であった。日本を代表する現代作曲家-武満徹の『フォリオス』、キューバの現代作曲家レオ・ブローエルの『黒いデカメロン』を独奏した三浦は、ギターを絶妙かつ自在に操り、繊細で冴えた楽曲解釈を見せた。

 

魅力的なピアニスト黒川智佐は多彩な演奏手法を駆使して、清水研作の『ドリームズ イン ポリフォニー』、武満徹の『遮られない休息』、『ピアノ ディスタンス』を弾いたが、それらの曲が内包するイメージ、状況、気分が色鮮やかに描がき出されていた。同じく黒川の演奏による柴田南雄の『ピアノのためのインプロビゼイション』第2番も聴衆には好評であった。

 

堀越隆一の作品には温かみ、率直さ、誠実さ、インスピレーションが溢れている。 堀越の『仮面劇とシチリア舞曲』(子供のためのピアノ曲)は彼の10歳の娘-堀越まきが演奏した。堀越まきは4歳からピアノを習い、日本では豊富な演奏経験を持つが、外国での演奏はコストラマが初めてである。また、堀越みちこ(ヴィオラ)と黒川智佐(ピアノ)の演奏による堀越隆一の『ソング・ブック』も秀逸であった。

 

日本代表団のメンバーとしてコストロマを訪れたもう一人の作曲家、浅香満の『ヴィオラとギターのための五つの小品』は堀越みちこ(ヴィオラ)と三浦浩(ギター)の演奏により披露されたが、この曲も聴衆の絶賛を博した。

 

洗練されたイメージと音色を特徴とする日本の音楽はコストロマの聴衆の関心を呼んだが、それにとどまらず、聴衆がそれに対して活発に反応し、好感をもって受け入れたことは喜ばしい限りである。しかも、客席にいたのはプロの音楽家や音楽に詳しい人たちばかりではなかった。教師、俳優、画家、学生、そしてコストロマの子供たちも日本の音楽家に対して温かい拍手を送ったのである。

1994.6.4 コストロマ市新聞評(全文)【N.ヴォローディナ/鈴木功・訳】

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屋号 堀越隆一
住所 〒130-0021 東京都墨田区緑3-19-5-103
電話番号 03-5669-0393
営業時間 10:00~17:00
代表者名 堀越 隆一(ホリコシ リュウイチ)
E-mail info@horikoshiryuichi.com

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