個展・リサイタル 2011 なぜピアニストは森で道に迷ったのか

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」 
 第1楽章 Adagio sostenuto - Presto 
 第2楽章 Andante con variazioni 
 第3楽章 Finale (Presto) 

 作曲家にとっては悪夢のようなエピソードですが。このソナタは初演時には完成しておらず、フィナーレの第3楽章には自作の「ヴァイオリン・ソナタ第6番」の終楽章であったものを転用して初演にこぎ着けたようです。でも完成された現在のかたちは。第2楽章に長大な変奏曲を挟んだ巨大な作品になっています。作曲者の力技と情熱が作品に纏まりを与え、なおかつ古今のヴァイオリン・ソナタの中でも名作の一つにしてしまったのだと思います。標題とされている「クロイツェル」は後にこの作品を贈られたベートーヴェンが大変尊敬していたフランスのヴァイオリニストの名前で初演者ではありません。

violin:堀越 みちこ piano:中川 俊郎


ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品3-6
 第1楽章 Allegro 
 第2楽章 Largo 
 第3楽章 Presto

 「調和の霊感/L'estro Armonico」というのはかなりカッコいいタイトルです。ヴイヴァルディさんには他にも、あの有名な「四季」が入っているヴァイオリン協奏曲集「和声とインヴェンションの試み」というまるで現代音楽でも通りそうなタイトルの曲集があります。このイ短調のコンチェルトの第1楽章は子供たちの発表会のレパートリーの定番になっているので皆さん良くご存知かと思います。でも有名な割に余り演奏される機会の少ない他の楽章を含めてこの協奏曲は古今の名曲の一つだと僕は思います。

violin:堀越 みちこ アルエム弦楽合奏団 指揮:堀越 隆一



堀越 隆一:なぜピアニストは森で道に迷ったのか 2011初演
 第1章 プロローグ 
 第2章 サラバンドのように 
 第3章 ピアニスト 
 第4章 森のなかで 
 第5章 ダンス 
 第6章 森のなかで、ふたたび 
 第7章 祈り 
 第8章 エピローグ

 なぜ「ピアニスト」が、というのは僕にもよくわかりません。でもある日タイトルが浮かび、それに導かれてそこにどんな物語があるのかを探るように作曲がはじまりました。はじめはあらかじめ決まったプランもなく、プロローグの冒頭で弾かれるピアノの音形に導かれて作曲が進んでいきました。まあ行き先はボールに聞いてくれという感じです。
 森のなかには外界の時間とは別の時間が流れています。うっかり奥に分けいってしまうと木立や茂みの奥に棲む未知のものたちに出会うかもしれません。そこには日常の時間が停止したべつの世界があります。
 全体は独立した八つの章に分かれています。幾つかの章(第4、第6、第8章)では合奏団の複数の奏者が客席に散らばり、ヴァイオリンの響きが会場全体を包み込むようになっています。 第8章の「エピローグ」で曲は終わります。でも正直に言いますとピアニストがその後どうなったかを僕は知りません。無事に森から出てきていると良いのですが。
[ 付記]
 3月11日の東北大震災が起こったとき、まだこの曲は完成していませんでした。 僕はまず自分の気持ちを鎮めるために、そして作品を完成させるために、第7章に「祈り」を挿入することにしました。2001年に作曲した「石の年代記写本」の中の「エレジー(悲歌)」を通奏低音として弦の合奏が祈りのうたを歌います。

piano:中川 俊郎 アルエム弦楽合奏団  指揮:堀越 隆一